墨田区役所 安全支援課のインタビュー

墨田区の空き家に対する課題を教えてください

2018年の調査によると、墨田区の空き家率は10.4%で、これは東京都全体の空き家率よりもわずかに低く、全国平均の13.6%を大きく下回っています。また、23区内でも10番目に低い数値であり、墨田区は空き家率の低い地域と位置づけられます。

さらに、墨田区独自の空き家実態調査によると、確認された空き家数は平成28年度で889件、令和2年度には474件に減少しています。墨田区は都心に近いことからもともと空き家が少ないエリアでしたが、近年も空き家の減少傾向が続いていると考えられます。

東京都の特別区における空き家率のグラフ

この状況から、墨田区の空き家問題は、単に空き家の数ではなく、「老朽危険家屋」や「管理不全空き家」といった質的な問題であると捉えられています。特に墨田区は、木造密集地域(※人口密度が高いため、木造建築が密集して建築されている地域のこと)です。このような地域では、老朽化による建物の倒壊が発生した場合、隣接する住宅や前面道路にまで影響を及ぼす可能性が高くなります。こうした事情から、墨田区では単に空き家の数を減らす施策ではなく、空き家を含む老朽危険家屋をなくす施策に重点を置いているわけです。

また、墨田区では、人口増加に伴って不動産流通が活発です。そのため、空き家を不動産市場に乗せることが問題解決の糸口となります。しかし、その中でも市場的価値が低いために流通から取り残される物件も少なくありません。こうした物件は、売却や改修が行われないまま空き家となり、長期間放置されることで老朽危険家屋や管理不全となるケースが見られます。そういった、ケースを改善できるように施策を進めています。

墨田区老朽危険家屋除却費等助成制度の詳細を教えてください

墨田区では、管理不全空き家や老朽危険家屋の対策として「老朽危険家屋除却費等助成制度」を設け、所有者に対し早期対応を促しています。この制度は、管理不全により危険状態にある老朽家屋等の問題を早期に解決することで、地域住民が安心して暮らせる環境を整えることを目的としています。本制度には二つの主要な助成メニューがあります。

墨田区の不良住宅を対象とした除却費助成

「不良住宅を対象とした除却費助成」は、他の自治体にも見られる一般的な助成制度です。本制度では、安全支援課の職員と区が委託する一級建築士が現地を訪れ、所有者と共に建物の内外の状況を詳細に確認します。このプロセスを通じて、助成対象となるかどうかの判断を行います。年間30~40件の相談を受け付けていますが、実際に助成を受けられる物件はそのうちの10件程度にとどまります。

不良住宅の多くは、外観からも不具合が感じ取れるケースが多いですが、時には外観が健全に見えるにもかかわらず、内部がひどく損傷している物件も存在します。墨田区では、外観では老朽化が分からなかったものの、実際に内部を調べると、二階の床が抜けて一階まで落ちていたという事例もありました。

この助成制度のおかげで、外観からは気づきにくい隠れた危険家屋を減らすことができるようになり、これは制度設計時には予想していなかった副産物ですね。

なお、助成額は下記のようになっています。

対象物件 助成率 上限金額
通常敷地に存する物件 1/2 50万円
無接道敷地に存する物件 1/2 100万円

無接道敷地にある物件の除却工事費用は、手壊しや手運びなどの作業が増えるため、通常敷地の物件と比較して3~5割高くなるケースが多いです。そのため、墨田区ではこの点を考慮し、無接道敷地に存在する物件に対して、より手厚い助成を行うことが老朽危険家屋対策として効果的であると判断し、このような助成区分となりました。

墨田区の土地無償貸与を条件とした除却費助成

「土地無償貸与を条件とした除却費助成」は、その名の通り、対象建物を除却した後、跡地を墨田区に一定期間(原則10年間)無償で貸与することを条件にした助成制度です。この助成制度は、「売却しても買い手がいない」、「貸そうとしても借り手がいない」といった、通常の不動産流通の流れでは解決できない物件を対象としています。

実際に、この助成制度を活用した事例は2件ほどありました。いずれも建築基準法上の道路に接道しておらず、前面通路も1メートル程度の敷地で、改築や大規模改修ができず、長期間放置された結果、倒壊の危険性が高く、既に半壊状態にあるほど朽ち果てていました。このような物件を除却し、周囲の安全を確保できたことは、この制度を設置した意義があったと考えています。なお、助成額は下記のようになっています。

対象物件 助成率 上限金額
土地無償貸与を条件とした物件(土地) 10/10 200万円

東京都墨田区の解体や除却に関する補助金・助成金

墨田区の「すみだ空き家相談処」について教えてください

「すみだ空き家相談窓口」は、墨田区が設置している空き家等のワンストップ相談窓口であり、「予防的施策」の一環として実施している事業の一つです。

この窓口を設置するきっかけは、老朽危険家屋対策で建物所有者の方々と接している中で、かなりの割合の方が何らかの問題を抱えており、悩んでいると感じたことでした。例えば、相続問題が解決できない方や、不動産的に価値が低い物件の処分方法に困っている方など、悩みの内容はさまざまですが、「やらない」というよりも「やりたくてもできない」「どうすればよいかわからない」という方が非常に多いことが分かりました。このような方々に寄り添い、丁寧に解決していくことが、老朽危険家屋の解決や空き家の発生・危険化の抑制にも効果的だと考えました。

実際に、窓口設置から4年半の間で相談件数が250件を超えており、墨田区における空き家対策として非常に有効な事業であったと自負しています。

相談の範囲は、空き家に関連することであれば、相続問題や法律、建築に関する相談だけでなく、税金や財務的な相談等、幅広く対応できるよう、20の専門家団体と協定を締結し、相談体制を整えています。「あんしん解体業者認定協会」さんも、協定締結団体の一つとしてご協力いただいているところです。

空き家等ワンストップ相談窓口「すみだ空き家相談処」を開設した際、年間50件ほどのご相談を想定していましたが、実際には年間70件ほどのご相談に対応しています。事業者との提携数が増加することで、提供できる改善策も増えており、効果的なサポートが可能となっています。

NO 事業者名 相談内容 提携日
1 公益社団法人全日本不動産協会 東京本部 城東第二支部 不動産管理・不動産売買について 2019年4月1日
2 公益社団法人東京都宅地建物取引業協会 墨田区支部 不動産管理・不動産売買について 2019年4月1日
3 一般社団法人東京都建築士事務所協会 リフォーム・改築・建て替えについて 2019年4月1日
4 全建総連 東京土建一般労働組合 墨田支部 小規模修繕について 2019年4月1日
5 墨田区建設業協会 特に規模の大きい改修・建て替えについて 2019年7月1日
6 木ノ内構造弁護士 相続を始めとする法律に絡むことについて 2019年4月1日
7 東京都司法書士会 墨田・江東支部 法的手続きなどについて(空家を活用した民泊など) 2019年4月1日
8 東京都行政書士会 不動産登記などについて 2019年4月1日
9 東京都税理士会 本所支部 相続税対策などについて 2019年7月1日
10 東京都税理士会 向島支部 相続税対策などについて 2019年7月1日
11 墨田区しんきん協議会 融資などについて 2019年4月1日
12 京成電鉄株式会社 都市開発などを伴う空き家対策について 2019年7月31日
13 特定非営利活動法人空家・空地管理センター 空き家に関する総合的なノウハウ相談など 2019年11月1日
14 特定非営利活動法人日本地主家主協会 賃貸オーナーのノウハウなどについて 2019年11月1日
15 特定非営利活動法人空き家利活用プロジェクト 空き家の利活用について 2019年11月1日
16 学校法人電子学園(情報経営イノベーション専門職大学) 空家利活用(店舗経営)などのノウハウについて 2019年2月1日
17 株式会社ジェクトワン 空き家の利活用について 2021年3月1日
19 ネクスト・アイズ株式会社 総合的な不動産コンサルタント 2021年3月1日
19 一般社団法人あんしん解体業者認定協会 解体工事について 2021年3月1日
20 ランドブレイン株式会社 都市計画のコンサルタント 2023年9月1日

また、「すみだ空き家相談処」の周知活動が重要だと感じています。区の公式HPには情報を掲載しており、フェイスブックなどSNSを活用して周知も行っています。しかし現在の形では、情報を自ら収集しに来ていただける方にのみ広まる状況です。今後はより広範囲に情報を周知できる形を模索しており、その一つが取材への積極的な対応です。少しでも空き家でお困りの方の目に留まりやすくなるよう、情報発信を強化していきたいと考えています。

お問い合わせ先 空き家等ワンストップ相談窓口(すみだ空き家相談処)
住所 〒131-0046 東京都墨田区京島2丁目15番5号(一般財団法人 墨田まちづくり公社 京島事務所内)
電話番号 03-3617-2262
ホームページURL https://www.city.sumida.lg.jp/anzen_anshin/kurasinoanzen_ansin/akiya-taisaku/50326akiyasoudannmad.html

墨田区×あんしん解体業者認定協会との提携について教えてください

認定協会さんに相談窓口にご協力いただけたことは非常に良かったと思います。所有者様は解体業界に対して不安を感じていることが多く、実際に「解体業者を紹介してほしい」というご相談をいただくことも多いです。しかし、そういった場合に一社を紹介することは公平性の観点から難しいため、第三者的な団体である認定協会さんをご紹介できることは非常に助かります。

墨田区は認定協会さんの活動理念に共感しております。業界全体の透明性を高めるだけでなく、将来的には「解体業界に不安を覚える方がいない」業界にするために、業者さんへの教育などにも期待していますね。

墨田区役所 安全支援課の詳細情報

お問い合わせ先 墨田区役所 安全支援課
住所 〒130-8640 東京都墨田区吾妻橋一丁目23番20号 5階
電話番号 03-5608-6199
営業日 月、火、水、木、金
営業時間 8:30~17:30
公式HP https://www.city.sumida.lg.jp/kuseijoho/kunosyoukai/sosiki/anzen.htmll

著者情報

解体無料見積ガイド

解体無料見積ガイド編集部

解体無料見積ガイド編集部は、建物の取り壊しを題材に独自のコンテンツを発信するオウンドメディアを運営しています。2011年の創業以来、10年以上にわたるサービス運営経験の中で培ったノウハウを凝縮し、役立つコンテンツを発信しています。

監修

中野達也

中野達也

一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事
解体工事施工技士 登録番号:23130106
石綿作業主任者 修了証番号:13820
解体工事業登録技術管理者
公益社団法人 日本建築家協会(JIA)研究会員
一般社団法人東京都建築士事務所協会 世田谷支部会員

静岡県出身。日本全国の業者1,000社超と提携し、約10年間で数多くの現場に関与。自身でも解体工事業登録技術管理者としての8年間の実務経歴を持つ。専門家として、テレビ番組をはじめとする多数メディアに出演。これまでに一般家屋はもちろん、マンション、ビルなど様々な建物の取り壊しに従事し、工事を行いたい施主、工事を行う業者の双方に精通している。

出演メディア
めざまし8(フジテレビ系列)、ひるおび!(TBS系列)、情報ライブ ミヤネ屋(日本テレビ系列)、バイキングmore(フジテレビ系列)、CBCニュース(CBCテレビ系列)他多数

「あんしん解体業者認定協会」が運営する「解体無料見積ガイド」は完全無料で、最大6社の解体業者に現地調査と見積を依頼できます。もちろん業者から無理な売り込みはなく、見積後のお断り連絡も私たちが代行します。
登録している解体業者は全国1,000社以上、75社に1社の厳正な審査基準を通過した業者のみです。
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