雪の降らない土地で解体工事の費用が変わるとすれば、費用の変わる要因は繁忙期の違いくらい。
しかし、雪の多く降る土地ではどうでしょう。天候の影響で工期が延びたり、除雪作業で人件費がかさんでしまったりで、通常期よりも費用が高くなってしまうのでしょうか?
また、大雪の中でも安全に解体工事を行うことはできるのでしょうか。
今回は、降雪量の多い地域での解体工事についてご説明します!
雪の時期の解体工事のデメリット
降雪量の多い地域の中には、早いところで11月から降り始め、長いときは4月初旬まで雪が降り続くこともあるそうです。
約5か月もの長い期間、工事が行えないとなれば困りもの。
では、雪の時期に解体工事を行うとどのようなデメリットがあるのでしょうか?
雪によって変化する解体工事の費用
雪の時期に行う工事は、解体工事だけに限らず雪をどかす作業から始まります。
除雪作業には主に雪はねやスコップ、スノーダンプを使用したり、解体工事でも使用するパワーショベルなどを使うこともあります。
作業員の手作業で行えば、除雪作業の分だけ人件費がかかることになってしまいますし、重機を使用すればその分の使用料がかさんでしまいます。
雪の降らない時期であればこの作業は必要ないわけですから、確実に除雪作業の分だけ解体費用は高くなってしまう、ということなのです。
また、吹雪のように激しく雪が降ってしまったときは、残念ながら工事を一時中断せざるを得なくなってしまいます。
作業ができない日が続いてしまうと当然工期が延びることになってしまいますし、工期が延びてしまうと、そのために確保している人員の人件費もかさんでしまいます。
中には解体工事に重機を使えなくなるケースも
積雪量が増してしまうと、重機の出し入れが危険になってしまうため、重機を使用せず手壊しのみで解体工事を行う場合もあります。
手壊し解体は主にチェーンソーによる切断や、解体バチと呼ばれるクワなどを使用した工法で行われます。このような解体方法は大雪の時だけでなく、現場の道幅が極端に狭い場合や、敷地と道路の高低差が大きい場合にも適用されますが、手壊し解体は通常の倍工期がかかり、費用も2.3倍に跳ね上がってしまうと言われています。
重機の使用料よりも工期が延びることによる人件費のほうが高くついてしまう、というのがその理由になってしまうようです。
雪の時期の解体工事のメリット
ここまで雪の時期の解体工事におけるデメリットをご紹介してきましたが、実は悪いことばかりではありません。
実は、「解体工事は雪の時期は費用が高くなる」というイメージが定着しているばかりに、この時期の解体業者は仕事が少なくなってしまいます。
解体工事の依頼が極端に少ないために、冬は除雪業者として活動している解体業者も多いのだとか。解体工事にも繁忙期と閑散期がありますから、そもそもの解体工事の料金をその時期によって変動させている業者も多く存在します。
つまり、冬の時期は解体業者にとっての「閑散期」ですから、そもそもの費用を繁忙期よりも安く設定して、依頼がくるように工夫している業者もいるということです。
解体業者も雪の日の対策を考えている
基本的に、降雪量の多い時期でも解体工事を請け負っている業者では、雪が降る中での工事をどのようにして行うのかの対策をきちんと考えている業者が多いです。
作業員の防寒対策
雪の中の作業は非常に寒いもの。作業員が風邪をひいて人員が減ったり、動きが悪くなって怪我をしたりしてしまうと大変です。そのため、現場ではしっかりとした防寒対策が必要となります。
防寒服・防寒靴・カイロ・手袋などの防寒具を身に着けることはもちろん、熱風ヒーター、ブライトヒーター、ストーブなどを用意して、作業員が暖まれるポイントを確保しておきます。
また、雪が降っていなくても冬の現場は足場の凍結などで非常に滑りやすくなっていますから、滑りにくい靴を選ぶことも重要です。
天候を気にしながらの施工計画
雪の時期といっても、毎日吹雪のように雪が降ってしまうわけではありませんから、天候を確認しながら作業計画を組むことも大切です。
積雪量が多くなると解体現場の倒壊などが心配されますので、崩れやすい屋根や壁を取り壊す工程は雪の少ないうちに終わらせておく必要があります。
また、足場や養生は雪の重さに耐えられる強度の高いものを選び、大雪が予想される日の前日には足場の補強を行うなどの措置をしておきます。
このように、解体業者の中には雪の中でも解体工事を安全に行えるよう対策を取っている業者も数多く存在します。
費用が変わってしまうのは致し方ありませんが、一概に「雪が降っているから」と解体工事が難しくなってしまうわけではないようです。
雪国こそ空き家の放置はキケン!
雪の時期は工事費用が高くなってしまうし、工期が延びてしまうし……と思いながら、工事を先延ばしにしてしまうと、放置したままの空き家が危険な状態になってしまうかもしれません!
雪の降る冬こそ、空き家による被害が増してしまうのです。
倒壊の危険性が高い
老朽化した空き家では、雪の重みで家が押しつぶされたり、強い吹雪で外壁が剥がれてしまったり……といった被害が予想されます。
雪国では通常、積雪量が多い時には住民で雪おろしを行い、屋根が落ちたり、倒壊してしまう危険を防ぎます。
しかし、長い間放置された空き家には雪下ろしを行う住民もおらず、更には、雪や雨による湿気で腐朽してしまった木材がもろくなり、倒壊や破損してしまうことで近隣家屋に多大なる被害を及ぼしてしまうこともあります。
また、「ここには人が住んでいないからいいだろう」と除雪した雪を空き家に捨ててしまうような人もいるそうで、地域の治安も悪くなってしまいますし、空き家がどんどん雪に押しつぶされてしまいます。
雪で覆われていた空き家は、雪解けの季節には無残な姿に……。冬が終わったあとも、地域の景観を損なってしまう、という問題もあります。
動物が棲みついてしまう可能性も
雪国では冬の間、屋外の気温が極端に下がります。そうなると、外で暮らしていけなくなった動物たちが安全に暮らせる場所を求め、空き家に棲みついてしまうこともあります。
冬眠するような動物でしたら違いますが、体温の調節が難しく寒さに弱い生き物たちは、屋根のある暖かい場所を求めるもの。実際に、冬のあいだ野良猫が大量に棲みついてしまった空き家も存在します。
しかし、空き家に棲みついた動物たちは食料の確保が難しく、室内で絶命してしまう可能性も……。糞尿の始末も含め、異臭などの被害を生む可能性もあります。
動物たちにとっても、空き家は決して望ましい環境ではないのです。
雪の降る土地の解体工事についてのまとめ
雪の時期の解体工事は、工期が長くなってしまったり費用が高くなってしまうことはやむを得ないながらも、解体業者ではそれぞれの対策を施していることがわかりました。
しかし、雪の時期の工事を避けようと後回しにしてしまえば、冬のあいだに空き家によってとんでもない被害が生まれてしまうかもしれません。
解体工事はなるべく雪が本格的に降り出す前に計画し、やむを得ない場合は信頼できる業者と相談しながら、安全な工事を行いましょう。