取り壊しの現場は、取り壊す建物や敷地の大きさ、周囲の環境などが一件一件異なります。そのため、工事現場によって重機のサイズや種類を使い分けることで、あらゆる環境への対応が可能です。
本記事では、工事で実際に使用されている重機の種類や性能について解説します。どんな重機がどんな現場で使用されているのか、それぞれの特徴を見ていきましょう。
工事に使う重機のサイズと機能
取り壊しの際に通常使われる重機は「油圧ショベル」と呼ばれます。油圧ショベルには様々なサイズが存在し、建物や敷地の大きさに合わせて使い分けができます。
まずは、通常の油圧ショベルをサイズ別に見ていきましょう。
ミニサイズ
ミニサイズは、工事で使用される重機の中で最も小さいサイズです。ミニサイズを所有することで、建物前の道路幅や敷地の入り口が狭くても、建物を効率よく取り壊すことができます。
一般的に、油圧ショベルで一番小さいサイズは0.1(コンマイチ)と言われていますが、厳密にはそれより小さいミニサイズが存在します。
全幅は約1mで、全長は約4m。
0.1m²(コンマイチ)サイズ
0.1(コンマイチ)は、通常の工事で使われる中でミニサイズの次に小さい重機です。ミニサイズと同じく、大きな重機が入れない狭い土地での工事に適しています。
狭い土地が現場の場合、0.1やミニサイズを所持していないと、手作業での取り壊しが必要になります(手壊し解体)。
全幅は約1m70cmで、全長は約4m50cm。
0.15m²(コンマイチゴー)サイズ
0.15(コンマイチゴー)は、一般的に使用される油圧ショベルよりも、少し小さいサイズです。4トントラックで運搬が可能なため、4トントラックしか入らないような狭い土地では、0.15を使用するケースが多いです。
全幅は約1m50cmで、全長は約4m70cm。
0.25m²(コンマニーゴー)サイズ
0.25(コンマニーゴー)は、工事においてメインで使用されるサイズの重機です。運搬には最低でも7トントラックが必要で、敷地前の道路幅は4m以上必要となります。
0.2(コンマニ)というサイズも存在しますが、横幅が0.25とほとんど同じなので、全長の長い0.25を使用するのが一般的です。
全幅が約2m20cmで、全長が約6m。
0.45m²(コンマヨンゴー)サイズ
0.45(コンマヨンゴー)は、一般的な木造の建物には殆ど使用しません。広い敷地での操作が必須となるため、アパートや工場などのRC造に対してよく使用されます。
全幅が約2m50cmで、全長が約7m30cmです。
0.7m²(コンマナナ)サイズ
0.7(コンマナナ)の全長は10m近くに及び、高さのある鉄骨造やRC造に対して使用されます。0.4と同じく、一般的な木造の建物には殆ど使用されません。
全幅が約2m80cmで、全長が約9m40cmです。
大型の建物に使用される重機
そして、通常の油圧ショベルよりも、さらに大きいサイズの重機が存在します。主に大型のビルやマンションなど、階数の高い建物を取り壊す際に使用されます。
ロングアーム
その名の通り、通常の油圧ショベルよりもアーム部分が長く設計されている重機です。「ロングブーム」「ロングリーチ」「スーパーロングリーチ」などの別称も存在します。
河川や道路などの公共工事、マンションやアパートの取り壊しなどで多く使用され、高さは10m以上にまで及びます。
ツーピースアーム
アームの接合部分が、通常の油圧ショベルよりも一箇所多くなっている重機です。
ロングアームよりもさらに高い場所へ届く重機で、全長は15m以上にも及びます。写真の重機は、キャタピラの部分で成人男性の腰くらいの高さがあります。
マルチブーム
油圧ショベルカー ツーピースブーム解体仕様機| Japan Working Vehicles
アームの接合点が複数箇所に存在する重機です。現場の作業に合わせてアームを取り換えることができます。腕を伸ばすことで40mから50mの高さまで対応が可能となります。大型のマンションやビルにも対応できるのが特徴です。
アタッチメントの種類と機能
そして、重機の先端部分である「アタッチメント」は、付け替えが可能です。アタッチメントを替えることで、一つの重機で多くの建物に対応ができます。
フォーク(グラップル)
バケットが「すくう」のに対して、「はさむ」ことができるアタッチメント。躯体の破壊だけでなく、がれきを掴んだり、特定の素材を仕分けたりと細かい作業も可能です。
カッター
ペンチのような構造をしており、フォークと同じく挟むタイプのアタッチメント。挟む部分が刃になっているため、鉄骨やコンクリートも切断できます。主に、鉄骨造やRC造に対して役立ちます。
ブレーカー
巨大な筒状の金属で出来ており、アスファルトやコンクリート、岩石などを粉砕できるアタッチメント。主に基礎部分の粉砕に使用されます。
大割・小割圧砕機
2本の爪でコ柱や梁、壁などを掴み、圧縮したり曲げたりして破壊するアタッチメント。圧砕機には大割と小割が存在し、小割は更に細かくコンクリートを壊します。
コンクリートを砕いて中の鉄骨だけを取り出す際などに有効です。
バケットスケルトン
ショベルの部分が網目状になっているアタッチメント。残土とコンクリート、岩石などを分別したり、セメントをかく拌したりする際に使用します。
最新の解体重機事情
ここまでは、長い間使用されてきた、オーソドックスな重機たちを解説してきました。続いては、近年の解体業界で注目されている重機をひとつご紹介します。
0.1+ツーピースアーム
写真の重機は、0.1サイズのツーピースアームです。
通常の0.1サイズを狭い土地で使う場合、2階にはアームが届かないので、先に手作業で2階部分を取り壊します。また、通常のツーピースアームは大きすぎて、狭い敷地での稼働は不可能です。
しかしこの重機は、狭い敷地でも稼働することができる上に、建物の2階部分まで届く優れものです。両方の重機のハイブリッド型として重宝されています。
重機の費用について
最後に、重機の費用相場についてご紹介します。新品と中古では、金額や問い合わせるメーカーが異なります。
重機を新品で購入する場合
新品の油圧ショベルを購入する場合、メーカーさんによって金額には幅があります。そのため、参考までにとある業者さんの仕入れ値を一例としてご紹介します。
名称 | 価格帯 |
---|---|
油圧ショベルミニ | 550万円 |
油圧ショベル0.1 | 770万円 |
油圧ショベル0.2 | 1,200万円 |
油圧ショベル0.45(最新) | 1,700万円 |
新品の油圧ショベルの価格が知りたい場合は、メーカーさんに見積りや問い合わせを行う必要があります。下記は、国内での主要重機メーカーの一覧です。
企業ごとにホームページから見積りの申請ができますので、ご活用ください。なお、見積りの際は、価格や性能を比較するために複数の会社に見積りを申請するのがオススメです。
企業の記載は国内シェア率の高い建設機械のメーカー順になっています。
※解体の重機を販売している企業に限ります
重機を中古で購入する場合
また、重機は中古でも購入ができます。下記の表は、油圧ショベルの中古のおおよその価格帯です。
名称 | 価格帯 |
---|---|
油圧ショベル0.1 | 100万円~250万円 |
油圧ショベル0.2 | 200万円~400万円 |
油圧ショベル0.25 | 250万円~500万円 |
油圧ショベル0.45 | 400万円~700万円 |
油圧ショベル0.7 | 400万円~1000万円 |
上記の価格帯は、重機の中古販売社の価格を参考に表記しています。中古重機の購入に興味がある方は、下記の会社をご確認ください。
解体で使う重機の種類についてのまとめ
本記事では、重機の種類や機能、価格をご紹介してきました。油圧ショベルひとつとっても様々なサイズや種類があるため、現場や建物に合わせて使用する事が大切です。
価格や性能に関して疑問がある場合は、各メーカーにお問い合わせください。