解体工事内容に関する基礎知識
不法投棄の罰則について
不法投棄をする解体業者に依頼しないために!悪質解体業者の見抜き方
家屋の撤去業者を選ぶときは、親切・丁寧に対応してくれて、工事も速やかに行ってくれ、なおかつ安くしてくれる業者さんを選びたいと思いますよね。
ただ、撤去業者の中には、家屋を撤去したあとの廃棄物を不法投棄する、悪質な業者も数多く存在します。工事業者を選ぶときにはそんな悪質業者もいることや、どんな業者が怪しいのかを知っておく必要があります。
今回の記事では「不法投棄」にはどんな事例があり、どうすれば不法投棄をする業者を見抜くことができるのかを書いています。ぜひ悪質業者を見抜く目を養ってください。
不法投棄とは?
不法投棄とはどんな行為なのでしょう?
山や人気のない林道に投棄する、海や川に投棄する、新しい建築現場の基礎部分に埋め立てるなど、だいたい想像したとおりではないでしょうか。ニュースなどでもたびたび耳にしますね。
家屋の撤去工事をしたときに出た廃棄物は、平成14年に施行された「建設工事に係る資材の再資源化に関する法律(通称:建設リサイクル法)」により、分別とリサイクルが義務づけられています。工事で出た木材やコンクリートなどは捨ててしまうのではなく、建築資材としてリサイクルされるのです。
またその他の廃棄物も、一般家庭から出たごみと違い、産業廃棄物として扱われます。産業廃棄物は排出者が最後まで責任を持って処分しなければなりません。
しかし近年、廃棄物の増大により最終処分場がひっ迫してきていることもあって、廃棄物を適正に処分しようとすると費用が高額になってしまいます。
そこで悪質業者は廃棄物を処理場へ運ぶことなく、山などへ捨てたり、空地に埋め立てたりして処分費用を浮かせ、その分を利益とするのです。
不法投棄の事例
ここで実際にあった不法投棄のニュースを見てみましょう。
佐賀県警武雄署と白石署は13日、廃棄物処理法違反(投棄禁止)の疑いで、佐賀市兵庫町渕、解体業A(29)、東京都羽村市緑ケ丘2丁目、契約社員B(29)、杵島郡白石町福富、解体作業員C(27)の3容疑者を逮捕した。
逮捕容疑は5月31日、武雄市山内町の空き地に、長崎県松浦市で解体した家屋の木くずやコンクリート片など約2トンを投棄した疑い。A容疑者は「指示はしたが、仮置きしただけ」と否認、他の2人は容疑を認めている。
武雄署によると、A容疑者が指示し、B、C容疑者が投棄したとみている。他にも共犯がいるとみて調べている。
2018/11/15 ヤフーニュース
引用:佐賀新聞
典型的な不法投棄の事例ですね。山の中なら誰にも気づかれないだろうと考えたのかもしれません。
容疑者の言い分としては、廃棄物を「仮置きしただけ」とのことですが、「仮置き」と言うのであれば、ほんの少しの間でなくてはなりません。
何日間も置いておくのだとすれば、それは仮置きではなく「保管」ということになってしまいます。
もし廃棄物を「保管」するのであれば、屋外ならそれ相応の囲いが必要ですし、廃棄物の保管施設として掲示板を設置しなければなりません。
参考 保管基準の盲点は“仮置き”と“資材置き場”!不法投棄と判断されないために イーバリュー
マンション建設工事現場に産業廃棄物を不法投棄したとして、警視庁生活環境課は廃棄物処理法違反容疑で、相模原市中央区緑が丘の建設業「たまふく」代表取締役、玉田桂一容疑者(50)と同社従業員ら計5人を逮捕した。(中略)
同課によると、同社はマンションの基礎工事を担当しており、従業員たちは日中に産業廃棄物を埋めて土をかけていた。その状態で基礎工事を完成させようとしたとみられる。
近隣住民の男性が作業を目撃し、都を通じて浅草署に通報して発覚。産業廃棄物は神奈川県内の同社の資材置き場から運んでおり、家屋の解体工事で出たものとみられるという。
産経新聞
引用:産経新聞
新しく建てようというマンションの基礎部分に廃棄物を埋めるなんて、とても悪質ですね。
しかし建物の基礎部分に廃棄物を埋め立てるのは、昔はよくあったことだそうで「古い家の下には何が埋まっているかわからない」と言われるほど、古家を撤去したときには古い廃棄物が見つかることがあるそうです。
以上のように、不法投棄をする業者は平成10年代前半のピーク時よりは大幅に減少したものの、平成28年でも132件の不法投棄件数が報告され、廃棄物の量も7.5万トンと、まだまだ後を絶ちません。実際に、上記にあるニュースはどちらも平成30年、最近のものです。
施主が罰せられることもあるの?
ここで気になってくるのが、「もし、知らない間に悪質業者に不法投棄されてしまったとして、施主も罰せられてしまうのか?」ということですよね。
結論から言うと、不法投棄されていることを知らなかった場合、施主が罪に問われる可能性はほとんどありません。
施主は業者に取り壊し工事を発注しただけであり、工事で出た廃棄物を適正にリサイクル・処分する責任は、業者とその先の運搬業者、処理業者にあるからです。
ただし、以下のような場合は施主も罰せられてしまいます。
注意事項
-
Case 1
不法投棄をする業者と知っていながら工事を依頼した
-
Case 2
はじめは気づかなかったが、途中で不法投棄をしていると知り、それでも工事を続行させてしまった
ただ、いくら施主が罰せられることがないにしても、信頼のおける業者さんに工事を依頼することは施主としての義務と言えるでしょう。
東京都環境局のページにも次のように書かれています。
施主が気をつけるべきは、解体工事をする旨を事前に行政に届け出ることと、きちんとした業者さんを選ぶことです。
それでは、悪質業者はどのようにして見抜けばよいのでしょうか?いくつかポイントがありますので、見ていきましょう。
悪質業者にあわないためにするべきこと
では次に、悪質業者にあわないためにするべきことをご紹介しましょう。
工事の見積りは書面でもらってチェックしよう!
撤去工事の見積書はきちんともらって、業者さんの会社名と住所、サイン、捺印が入っているかチェックし、大事に保管しておきましょう。
会社名や住所をネット検索するなどして、その場にちゃんと現存する会社かどうかを確認するだけでも、悪質業者を見分ける第一歩として効果的です。
また、現場の調査もせずに「〇〇万円くらいでできますよ」と言ってくるような業者や、工事費用が極端に安い業者は信用できません。見積書を見れば、どんな工事にいくらくらいかかるかの詳細がわかるので、見積書は必ずもらって自分の目でチェックをしましょう。
信頼できる業者さんは工事の詳細もきちんと出してくれ、質問すればきちんと答えてくれます。見積書があまりにもずさんな業者は疑ってみたほうがよいでしょう。
撤去工事の現場を見に行こう
可能であれば、撤去工事の現場を見に行くことも効果的です。近所に埃が舞うのを防いだり、防音のために張る養生シートが、ブルーシートなど粗末なものであったり、工事で出た廃棄物をまったく分別することなくごちゃ混ぜにしてトラックに積んでいたりするのは怪しいと疑ってみたほうがよいでしょう。
家屋を壊すとき、木材やガラス、コンクリートなど、いろんな廃棄物が出ますが、それらをまったく分別することなく機械で一気に壊すことをミンチ解体と呼びます。
ミンチ解体は平成14年の建築リサイクル法の施行にともない禁止されました。現在では、それぞれの資材を現場で分別しながら壊すことが義務づけられています。
工事の現場を見に行けば、ミンチ解体をしている場合はすぐにわかりますし、ミンチ解体をしている業者はその時点で罰せられる可能性があります。
工事完了後にマニフェストE票のコピーをもらおう
建物を壊し、そこから出た廃棄物を処分するときには、廃棄物の排出事業者(ここで撤去体業者)が「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」を記入し、交付することが義務づけられています。
産業廃棄物を処分するには、廃棄物を運搬・処分・最終処分するための資格や許可、さらに運搬のための車両や処分施設などが必要です。 そのため、だいたいの排出事業者は産業廃棄物の処理を、収集運搬業者や処分業者に委託します。
こうして廃棄物はいろんな業者の手を渡りながら処分されますが、その間に不法投棄されることのないように、排出事業者がマニフェストを作成し、確認することにより、廃棄物の流れをきちんと把握し、適正に処分されたかを確認するのです。
マニフェストには、廃棄物の種類や形状、数量など、また、どこの収集運搬業者・処分業者に委託するのか、そして最終処分場の予定場所がどこかなどが記入されます。
マニフェストは複写式で7枚つづりになっていて、A~E票まであります。それぞれの役割を以下で見てみましょう。
- A票:排出事業者の控え
- B1票:収集運搬業者の控え
- B2票:排出事業者が、委託した収集運搬業により中間処理・最終処分業者へ運搬されたことを確認するためのもの
- C1票:中間処理、最終処分業者の控え
- C2票:収集運搬業が自分の運搬した廃棄物の処分を確認するためのもの
- D票:排出事業者が委託先の処分終了を確認するためのもの
- E票:排出事業者がすべての最終処分(再生を含む)が終了したことを確認するためのもの
また最近では、紙マニフェストではなく、電子マニフェストで管理している業者さんも増えています。
マニフェストに関しては、建設六団体副産物対策協議会の解説がとてもわかりやすいので、詳細を確認されたい方はぜひご覧になってください。
参考 建設系廃棄物マニフェストのしくみ 建設六団体副産物対策協議会
参考 廃棄物処理法に基づく電子マニフェスト 公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター
廃棄物の処分が無事完了すると、マニフェストのE票(最終処分終了票)が排出事業者の手元に戻ってきます。E票には中間処理業者により、最終処分終了日、最終処分(再生を含む)を行った場所の所在地と名称が記載されています。
施主としてきちんと廃棄物が処理されたかを確認するには、撤去工事が完了したあと、業者にマニフェストのE票のコピーを貰いチェックするとよいでしょう。
もしE票を見せてほしいと伝えたところ、あやふやなことを言って見せなかったりする業者はとても怪しいです。マニフェストは、産業廃棄物を処理するときには必ず交付する義務があり、交付しないならその時点で罰則の対象になります。
注意事項
-
Case1
まれに業者が産業廃棄物の運搬・処分・最終処分まですべて自社で行っている場合があります。今のところ自社処理で完了できる場合は、マニフェストの交付は義務づけられていません。
-
Case2
優良な業者であれば何らかの書類を作成してくれますが、それらの書類もなく不安ということであれば、役所に行って、工事を依頼した業者が産業廃棄物の処理資格や処分施設を持っているか、確認してもらいましょう。
不法投棄の罰則についてのまとめ
家屋の撤去工事を依頼するというのは、注意すべきことがたくさんあって大変ですね。
ここでは「不法投棄をされないために」、不法投棄にはどんな事例があるのか、また、どんな注意すべきことがあるのかを見てきました。
ただ、ここで学んだことは不法投棄を防ぐだけではなく、安心・安全に解体工事をしてくれる、信頼できる業者を見つけることにも繋がるはずです。