解体工事にかかる費用のベースは、「坪単価」。坪単価の相場が分かると、だいたいの予算が立てやすくなるだけでなく、見積り金額の妥当性についての不安を解消できます。
また、家の立地やその他の様々な条件によっては、見積り金額に追加で費用がかかることもあります。
本記事では、解体工事の坪単価についてと、どのような場合に別途費用がかかるのかをご紹介します。
坪単価とは?
坪単価は"1坪あたりの単価"という意味です。解体費用は「坪単価×床面積」で算出されます。
床面積は建物の総面積のことです。2階建て以上の建物であれば、それぞれの階の面積をすべて足したものになります。たとえば、1階が40坪、2階が30坪の家であれば、床面積は70坪になります。
坪単価の相場
坪単価の相場は、建物の建材によって異なります。まずは、全国の平均値を見てみましょう。
以下は「解体無料見積ガイド」を通して実施された解体工事のデータに基づいています。
構造 | 平均坪単価 | 費用幅 |
---|---|---|
木造 | 34,356円 | 20,000円~70,000円 |
鉄骨造(S造) | 41,335円 | 25,000円~95,000円 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 77,213円 | 55,000円~120,000円 |
地域によっての違い
坪単価は地域によって相場が異なります。例えば東京都渋谷区と東京都八王子市では、およそ1万円ほど相場が違ってきます。2つの地域の相場が違う理由は、都市部のほうが人件費が多くかかる傾向にあるためです。
また、渋谷区のように建物が狭い範囲に密集している地域では、重機の入るスペースがなく、手作業で解体しなければならないケースもあります。その場合、作業する職人さんの負担が増えてしまうので、人件費が多くかかってしまいます。
過疎地域では解体業者が少なく人手不足のために、人件費がかかってしまう場合もあります。しかも解体工事で出た廃棄物は産業廃棄物処理場で処分されますが、処理場が近くに無い場合は遠方まで運ばなければならず、その分の運搬費用もかかってきます。ゆえに、結果的に坪単価が高額になってしまうケースも少なくありません。また、自治体によっても廃棄物の処理費の基準が違うので、一概に都市部が高いとも言い切れません。
地域別の解体相場をより詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
時期によっての違い
解体業界は一般的に12月から年度末の3月までが繁忙期で、その他の時期と坪単価が異なります。
繁忙期は様々なところで解体工事が行われ、産業廃棄物が大量に発生します。また、産業廃棄物の処理場は一度に受け入れられる廃材の量に限りがあります。その結果、繁忙期には廃材の処分費が上がり、坪単価が値上がりしてしまうのです。
坪単価に含まれない費用は?
解体工事の見積書には、坪単価に含まれない費用も記載されています。たとえば、付帯工事費や建物養生費などです。
最終的な解体費用の計算方法をまとめると、以下のようになります。
- 「坪単価」×「坪数」=「本体工事費」
- 「本体工事費」+「付帯工事費・建物養生費・残置物処分費など」=「解体費用の総額」
解体業者によって見積り書の書き方は異なりますが、坪単価に含まれない主な費用項目について、実際の見積書をもとにご紹介します。
建物養生費
工事現場の前を通ると、建物がシートで覆われているのを目にしますよね。解体工事の現場を囲う養生シートは、工事中に出るゴミやホコリ、建材を壊した際の細かな破片やガラス片が周囲に飛散するのを防ぎます。
近隣の洗濯物や車などを汚してしまったり、粉塵を吸ってしまった人が体調を崩してしまったりするおそれがあるからです。
また、解体工事による近隣トラブルのうち、最も多い事例が騒音トラブルです。特に重機を使用して解体する場合、どうしても大きな音が響くので、音を最小限に抑える働きを持つ遮音性に優れたシートを設置することはとても重要です。
このように養生シートは機能性の高い素材で作られているので、シート設置にかかる費用はやや高額です。写真の例は、木造2階建て住宅48坪の見積書です。
なお、一般的な2階建て住宅の養生費の相場は、10~15万円です。
重機回送費
見積書の「重機回送費」とは、解体工事で使用する重機を、解体業者の重機置き場などから解体現場に運搬する往復の費用です。
重機を現場周辺に駐車できず工事期間中に何往復もする場合は、重機回送費が高額になる場合があります。
だいたいの相場は、トラック1台につき3~5万円です。
近隣清掃費
養生シートを設置してもなお、重機の移動や廃棄物の搬出で周辺を汚してしまう可能性があります。周辺の道路が汚れていると、近隣の方から思わぬクレームをもらう場合があるため、綺麗に清掃をしてもらいましょう。
だいたいの相場は数千~1万円程度です。
整地費
解体後、重機などで土地を綺麗に整える「整地作業」が行われます。石一つ残さないような丁寧な整地もあれば、ガラと呼ばれる塊を残す整地を行う業者もあります。綺麗に整地をしないと、次の新築工事に着工出来なかったり、土地の買い手が付きにくくなったりといったデメリットが生じます。解体業者や工事内容によって整地の仕方は変わりますので、事前にどのように整地を行うのか確認しておきましょう。
届け出、手続き費
解体工事を行う上で必要な手続きにかかる費用が発生します。手続き自体は解体業者が代行して貰えますが、費用は依頼者負担です。主に廃棄物の再資源化に関わる「建設リサイクル法」に基づく届け出と、トラックや重機を道路に駐車する為に必要な「道路使用許可」の申請です。
また、届け出・手続き費は「諸費用」に含まれている事もあります。
その他場合によって追加費用がかかるもの
ここまでご紹介してきた費用項目は、解体工事の際にもれなくかかる項目でした。
ここからは場合によってかかる費用について説明します。ご自身の状況に合わせて確認してみましょう。
手壊し解体
現場までの道路や家屋前の道幅が狭く、重機の入るスペースが無いと、人力で解体工事を進めることになります。これを「手壊し解体」と言い、重機を使用した解体作業に比べると工期が倍以上になる可能性があります。
さらに、人数も追加で必要になることが多く、人件費がかさみます。もし手壊し解体が必要になった場合、解体費用は2~3倍ほど割高になります。ただ、手作業での解体のため、重機使用時より振動や騒音を抑えられるというメリットもあります。
残置物処理
残置物とは居住していた人が建物や敷地内に置いていった私物のことです。本棚やタンスなどの家具、冷蔵庫やテレビ、電子レンジなどの電化製品が当てはまります。また、自転車や物置、その他細かな生活用品なども残置物です。
これらは自身で手配をしてリサイクルショップに引き取ってもらうか、粗大ゴミとして自治体に引き取ってもらうことが可能です。大量にある場合はかなりの労力を要するかもしれませんが、1点あたり数百円から処分できるので、費用を抑えたい場合にはご自身で処分されるのがオススメです。
なお、解体業者に依頼すれば手間が省けます。ただし解体業者にお願いする場合は、処理場に持ち込む運搬費もかかりますし、産業廃棄物として処理するので、ご自身で処分するのに比べ費用は増しますます。
写真の例では4tトラック1台分で6万円になっています。
地中障害物と地中埋蔵物の撤去と除去
いざ解体工事をしてみると、地中から廃棄物が出土する場合があります。この廃棄物のことを、地中埋設物といいます。解体してみないと地中埋設物があるかどうかは分からないため、見積りには含まれません。
もし解体工事中に見つかった場合は、見積り金額とは別に追加費用がかかります。
地中埋設物の具体例は、排水管やコンクリートガラ、陶器片などです。また、建物に使われていた浄化槽が出てくる場合もあります。そのため、建物について把握していることがあれば、くまなく解体業者さんに伝えておきましょう。そうすることで、見積り後に追加で請求されるリスクを減らすことができます。
樹木の伐根
古い家屋だと特に、庭に立派な樹木が複数植えてあることは珍しくありません。樹木は重機で伐根し、トラックで運びます。樹木の伐根作業は撤去とは別作業なので、別途料金がかかります。写真の例だとトラック1台分で6万5千円になっています。
井戸の撤去
井戸の撤去は、井戸単体の埋め戻しのみ行う場合と、家屋解体に伴って井戸も埋めるパターンの2つがあります。費用は依頼する解体業者や工事現場によって異なりますが、相場は10万円前後です。さらに、お祓いをお願いする場合は別途で2~3万円がかかります。
ただし、お祓いは解体時に行うことが義務づけられているわけではありません。実施の有無はご家族や解体業者とよく相談してください。
アスベスト除去、処分費用
アスベストは、人体への健康被害が明らかになり、2006年以降使用禁止となった建築資材です。人体への健康被害が明らかとなっていることから、アスベストが使用されている建物を解体する際には、特別な処理をしてもらうことが必須となります。費用は、アスベストの飛散レベルによって1m²あたりの単価が変わります。
火災物件の解体
「火災物件は既に火災で焼け落ちているから、通常よりも解体費用が低くなるのでは?」と考える方は多いでしょう。しかし、通常の解体工事で出た廃材は再利用できますが、火災で焼け残った廃材は再利用できません。
そのうえ、炭と化した廃材の処分費用が割高になるため、火災物件の解体は、通常の解体よりも費用が増します。
長屋の切り離し解体
自分が所有している1戸の住宅分を切り離す際に、隣家の建物全体の強度が下がらないよう配慮しなければなりません。さらに、隣家の外壁を、切り離す前と同程度の状態に補修することが必要です。そのため、通常の解体工事よりも坪単価が上がるうえに、本体工事費とは別に補修工事の費用がかかります。
万が一の事故やトラブルの場合の費用負担は?
解体業者は、必ず加入しなければならない保険、請負業者賠償責任保険及び労働災害保険があります。
一例に、近隣の敷地にヒビが入ってしまい、工事中に隣人とトラブル発生、補修費用を請求された。工事による被害は、解体業者の責任になるが、予想外のトラブルに巻き込まれないように施主として、保険の加入有無を確認しておくことが大切です。
見積書の記載方法に注意!
見積書の書き方は解体業者によって違います。ほとんど詳細を記載しない大雑把なものから、逆に分からなくなる程細かく記載している見積書もあります。
そのため、大事なのは「内訳の理解」です。解体費用の内訳を理解して、見積書から対応している箇所を探しましょう。次は、見積書を確認する上で注意するべき項目についてお話します。
税抜きか税込みか
普段の買い物ならあまり気にならないかもしれませんが、解体工事は100万円単位の費用がかかります。税抜き表示と税込み表示では受ける印象が全然違います。少しでも安く見せるために税抜き表示で記載している業者もあるので、税込み価格をしっかり確認してください。
一式○○円は注意
工事費を一括で出して、工事内容の詳細を書かない解体業者もいます。詳細が無いと他社と比べられませんし、工事内容も不透明で誠実さに欠けます。詳細込みで見積書を出してとお願いしても出して貰えなかった場合は、他の業者への依頼を検討しましょう。
概算費用?現地調査?
本体工事費は坪単価で計算されるので、事前に現場に行かなくても費用を概算出来ます。しかし、あくまで概算なので正確ではありません。そして、現地での調査をしないと付帯工事費が明らかになりません。工事内容の比較をする為にも、一度現地調査を経てから見積書を出してもらいましょう。
業者間で大きな金額差がないか?
見積書を2社以上で比べた時に、大きな金額差があった場合は要注意です。どちらかが一般的な工事内容では無い可能性があります。しかし、内訳の意味を知っていれば詳細を確認する事で異常に気づけます。工事内容に欠陥がある場合は、工事費が低くても一度考え直しましょう。
廃棄処分費だけやけに安い
廃棄処分費だけが安い場合は注意が必要です。廃棄物を処理すると言って不法投棄をしている悪徳業者もいます。廃棄処分費は解体費用の大部分を占めるため安価だと依頼側の食いつきも良いですが、間接的に犯罪に関わらないようにする為に内容をしっかり確認しましょう。
解体費用を予算内におさめるために
最後に、解体費用を抑える方法について説明していきます。
解体費用は、さまざまな条件によって決まるため、単純には算出できないことがお分かり頂けたかと思います。「解体は想像していたよりも費用がかかる」と感じた方も多いのではないでしょうか。
また、解体後に建て替えを予定している方や違う土地に住み替えを予定している方は、「資金はできるだけ新居に使いたい」と考える方もいらっしゃるでしょう。
解体費用は様々な工夫をすることで、10万円~100万円単位で費用を抑えることができます。
相見積りをとる
相見積りとは、複数の業者から見積りを取得することです。
相見積りによって、各業者の見積りを比較・検討することができます。
見積りの項目や金額の違いについて把握できるため、取得した見積りの中から適正価格の業者を選定することに繋がります。
土地の売却を目的とする方へ
解体工事を検討されている方の中には、土地を売却することが目的の方もいらっしゃるでしょう。土地を売るなら、なるべく良い条件で売りたいですよね。それゆえに「更地と古家付き土地、どっちのほうが良い条件で売れるの?」と頭を抱えている方も多いかと思います。
土地を更地にして売却する場合と古家付き土地のまま売却する場合の特徴を踏まえて、それぞれメリットとデメリットを紹介します。
条件 | メリット | デメリット | こんな方におすすめ |
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土地を更地にして売却 | ・土地が売れやすくなる ・瑕疵担保責任が発生しない |
・解体費用の負担 ・固定資産税の増加 |
・家の老朽化が激しい ・立地がよくない |
古家付き土地のまま売却 | ・解体費用がかからない ・固定資産税が上がらない |
・瑕疵担保責任がある ・売却価格が低くなる |
・早く売却を進めたい ・立地条件がいい ・家の状態がいい |
土地を更地にして売却する
日本では中古物件よりも新築需要のほうが高いため、古くなった建物がある土地よりも更地のほうが売れやすい傾向にあります。
しかし敷地内を更地にするには、解体費用が必要となります。建物の構造や敷地の状態にもよりますが、ある程度大きな費用がかかるということを念頭に置かなければなりません。
古家付き土地のまま売却する
古家付き土地のまま売却する場合、撤去する必要がないため、まとまった金額を用意する必要はありません。しかし、建物の状態によっては売却価格が更地よりも低くなってしまう可能性もあります。
- 家の状態や立地条件を確認する
- 売却条件のメリットデメリットをよく確認した上で、解体工事をするかしないか決める
解体工事の坪単価とその他の費用についてのまとめ
今回は、解体費用のベースとなる坪単価についてや、坪単価に含まれないけどもれなくかかる費用、場合によってはかかる費用について詳しく説明させていただきました。
実際の費用はプロが現地に足を運んで見てみないと決められません。どんぶり勘定ではなく、現場に来てしっかり測量してくれる解体業者さんに依頼して、しっかりとした見積りを出してもらうのが重要です。