店舗として利用していた建物が老朽化して解体を検討している方や、賃貸物件の返却に伴い店舗の原状回復を検討している方など、店舗の解体をお考えの方は多いと思います。
この記事では、店舗の解体に関する費用相場や、店舗の解体に伴う費用が変動する要因について紹介しているのでぜひ参考にしてみてください。
一軒家の店舗解体の見積り例
一軒家を店舗にしている場合や、住宅の一部を店舗にしている場合など、建物の構造や条件によって必要な工事費用は変わります。
実際に一軒家の店舗を解体した事例を見てみましょう。
木造店舗の解体費用(埼玉県ふじみ野市の小料理屋)
もともとは小料理屋さんとして利用されていましたが、空き家となっていた一軒家です。
築50年ほどが経過しており、老朽化がかなり進んでいて雨どいなどが外れそうな状態でした。
なお、残置物などはなく、室内の片付けは完了していました。
構造 | 木造2階建て |
---|---|
坪数 | 20坪 |
解体費用/坪単価 | 32,175円 |
費用総額 | 1,200,000円 |
木造店舗の解体費用(東京都八王子市のお茶屋)
所有者のお父さんが営んでいたお茶屋さんの解体工事で、建物は雨漏りが酷く、改めて貸し出しするのは不可能とのことで解体工事に至ったご依頼です。
工事後は、更地を駐車場にする予定で砕石敷きなどの追加のご希望がありました。室内は清掃業者が入り、何もない状態で見積りを行っています。
構造 | 木造2階建て |
---|---|
坪数 | 11坪 |
解体費用/坪単価 | 49,445円 |
費用総額 | 1,210,000円 |
木造店舗の解体費用(栃木県佐野市の八百屋)
閉店している八百屋さんの店舗解体で、老朽化が進んでおり解体して駐車場にするご依頼でした。隣の建物との間にあるブロック塀は共有でしたが、ピッタリくっついていて施工には注意が必要でした。
構造 | 木造1階建て |
---|---|
坪数 | 18坪 |
解体費用/坪単価 | 22,361円 |
費用総額 | 649,000円 |
木造店舗の解体費用(茨城県つくば市のクリーニング店)
所有者のお父様が購入した元クリーニング屋さんの店舗解体です。
強風の影響で屋根の一部が飛んでおり、室内には残置物も残っている状態でした。
なお、こちらのご依頼は近隣の方から苦情が入ったことで解体工事に至ったそうです。
構造 | 木造1階建て |
---|---|
坪数 | 30坪 |
解体費用/坪単価 | 28,500円 |
費用総額 | 1,365,100円 |
現状回復を伴う店舗解体の見積り例
では次は、一軒家ではなく賃貸した場合の店舗解体についてです。
賃貸物件やテナントの返却といった、原状回復を伴う店舗解体では、内装のみを撤去する場合とスケルトン工事まで行う場合とで、大きく2つのパターンが想定されます。
なお、同業者が居抜きで賃貸契約をする場合はスケルトン工事ではなく、内装のみの解体で済む場合があります。
内装のみの見積り例
構造/地域 | 床面積 | 解体費用/坪単価 | 費用総額 |
---|---|---|---|
鉄骨造/東京都武蔵野市 | 17坪 | 30,911円 | 525,490円 |
スケルトン工事の見積り例
構造/地域 | 床面積 | 解体費用/坪単価 | 費用総額 |
---|---|---|---|
木造/東京都世田谷区 | 34坪 | 39,147円 | 1,331,000円 |
上記の表は、東京都で行われた店舗解体工事の見積り例です。
なお、飲食店と美容室で備品の種類が異なるように、オフィスの事業形態によって工事の中身は変わります。そのため、一概に広さだけで解体費用を把握することは難しいと言えます。
また、解体業者の経験やノウハウによっても見積りの金額に差異が生じます。依頼主が工事費用を安く抑えるためには、あらかじめ複数の業者から相見積りを取ることをお勧めします。
工事の手続きや流れについてはこちらの記事も参考にしてください。
店舗解体の流れ
事前にやるべき項目とその順番を整理しておくことで店舗の解体をスムーズに進めることができます。具体的な流れは以下の通りです。
管理者との打ち合わせ
店舗の解体が決まったら、まず初めに行うのがオーナーや管理者との打ち合わせです。
原則的には事前に交わした賃貸借契約のもと、原状回復やスケルトン工事を行います。
ただし、次の入居が決まっている場合や、引き続き同業種の入居が見込める場合は、例外的に一部の設備を残せる場合があります。
そのほか、工事範囲の再確認も踏まえて必ずオーナーや管理者と事前に連絡を取りましょう。
店舗内の設備の撤去
打ち合わせにより工事の内容が決まったら、まず店舗内の設備を撤去していきます。
テーブルや椅子、厨房内の設備、不用品などなど、限りなく店舗内が何もない状態になるよう撤去していくのがポイントです。
なお、不用品の処分は業者に依頼することもできますが、費用が割高になる場合があります。余裕がある方はご自身で取り組まれてみてください。
また、オーナーや管理者と相談のうえ、ご自身が購入した設備を一部残すことになった場合でも、退去後は所有権がオーナー側へ移ってしまうので注意しましょう。
ライフラインの停止
工事の前に、電気、ガス、インターネットなどのライフラインの停止やケーブルなどの撤去の手続きが必要です。工事は建物だけではなく、設備の部分も撤去する必要があるためです。ライフライン停止の手続きは、工事施行の1週間前までには終えるようにしましょう。水道は工事中に使用するため停止しない場合があります。
店舗内の内装と床材の撤去
設備の撤去が終わりライフラインの停止も済んだら、続いて内装と床材を撤去していきます。
柱や床材の撤去は斫り工事と呼ばれ、主に手作業や小型の重機でコンクリートを砕いていく作業がメインです。しかし、斫り工事は騒音や振動を伴います。そのため、苦情やクレームを受けやすいので注意が必要です。状況によっては、他店舗の営業時間を避けて工事を行うようにしてください。
その他、防音対策はもちろん、同じテナントビル内の関係者には事前の告知も忘れずに行いましょう。
店舗解体の費用が高くなるケース
店舗の解体費用が事前の見積りより高くなる理由として、以下のような理由があります。
店舗内に残置物がある
解体する店舗にエアコン・冷蔵庫・洗濯機などの家財道具や厨房、椅子、テーブル、カウンターといった店舗の設備が残っていると、撤去と廃棄物処理に追加費用が発生します。
店舗解体費用を少しでも抑えるためには、リサイクルを利用するなどして、室内残置物を自分で撤去する工夫をしてみましょう。
室内残置物の撤去方法はこちらの記事にまとめています。
残置物の処分は?解体工事の前に今からできる節約術スケルトン工事などの追加工事が発生する
店舗解体を進める工程で、壁の下地などを壊すスケルトン解体に切り替わる可能性があります。
これは現状復帰のために必要な作業であれば追加され、費用も増加します。
貸主・解体業者と解体する部分について、綿密な打ち合わせをすることが後々の費用トラブルを防ぐために大切です。
内装にアスベストが使われている
アスベスト含有製品は段階的に規制されており、現在は製造、使用などが完全に禁止されています。しかし、完全に規制される前の2006年以前に建てられた建築物には、建材として使用されている可能性がかなり高いといえます。
店舗の内装にアスベストが使われていた場合、特殊な除去作業が必要です。そのため、処分費用は高くなる恐れがあります。
アスベストが含まれる建物の解体については、こちらの記事で詳しく解説しています。
個室や小上がりなどレイアウトが複雑な店舗
店舗によっては、個室を追加したり、小上がりがあったりして間取りが複雑になっている場合があります。そのため、店舗の構造によっては撤去作業に手間が掛かったり、処分する廃材が増えて費用が高くなる恐れがあります。
エレベーターが設置されていないビルに入居している店舗
路面店と違ってビルや施設に入っているテナント店の場合、機材や廃材を運ぶトラックを直接お店の前に付ける事ができません。
そのため、2階以上の立地でエレベーターがないテナント店舗の場合、機材や廃材の運搬に手間が掛かってしまい、人件費が高くなってしまうケースがあります。
店舗が賃貸の場合は契約期限に気をつける
賃貸契約で借りている店舗の場合、契約期間内に原状回復を行う必要があります。
工事が間に合わず期日を超過した場合は、違約金や追加の賃料支払いも生じるため、解体業者選びは余裕をもって始めることをおすすめします。
業者の選定・依頼・見積り・契約・着工という流れになりますので、1ヶ月程度は見積もっておきたいところです。
過密地域の店舗解体での注意点
日本では土地が狭く建物が密集してるため、隣家を損傷しないように繊細な技術が求められます。そのため、過密地域の店舗解体は以下のような注意点があります。
時間規制や変則スケジュールが発生する
工事は24時間いつでもできるわけではありません。朝であれば通学時間帯、夜間であれば交通量の多い時間帯では工事に制約がかかる場合あります。
安全面はもちろんの事、この時間帯に工事を行うことでリスクが増し、人件費や設備費がかさみます。
そのため、1日の工事時間帯を分けて行う場合もあり、より効率的でスムーズに工事を進めるためのスケジュールを組む必要があります。
過密地域の立地条件によって費用が高騰する
立地条件によっては、費用が高くなるケースがあります。条件を3つに絞ったので、みていきましょう。
道幅が狭い
道幅が狭く重機が搬入できないケースです。住宅の解体に使われる重機の幅は2mですが、前面道路幅が2m未満であったり、前面道路の幅は広くても途中で2m未満の部分があると重機を搬入できません。また、曲がり角はより大きなゆとりが必要となるため注意するポイントとなります。
道路と敷地の高低差が大きい
敷地が前面道路よりも大幅に高かったり、低かったりする場合には、重機の敷地内への乗り入れが困難となります。クレーンを利用して敷地内に重機を入れる方法もありますが、クレーンを利用するスペースや重機を入れる庭などのスペースがない場合には、重機の利用は困難となります。
手壊し工事
重機を使えない場合、手壊しでの作業となります。チェーンソーによって柱を切断したり、解体バチと呼ばれる鍬のような工具によって建物の壁などを取り壊します。
店舗解体にかかる費用についてのまとめ
店舗の解体工事は、あらかじめ必要な費用を把握しづらい工事です。
かかる費用を抑えたい方は、複数の解体業者から見積りを取ることをおすすめします。
解体業者の選定期間は1ヶ月程度の余裕を持ち、事前に廃棄物の処分をしておくなどの工夫も効果的です。
賃貸契約の場合、契約期限について事前に確認して、解体業者に伝えるようにできるとスムースに工事が進むでしょう。