鉄筋コンクリート造(RC造)は、鉄筋によって補強されたコンクリートの構造です。
この構造の建物は、強度が高く壊しにくいという特徴をもち、木造や鉄骨造の住宅に比べて解体費用が高くなる傾向にあります。
ただし、さまざまな事情で価格を抑えられるケースや、さらに解体費用が高くなる付帯要因も存在します。
本記事では、そんな鉄筋コンクリート造の解体費用について、事例をもとに詳しく解説していきます。
鉄筋コンクリート造の解体費用相場
鉄筋コンクリート造の解体費用相場は、条件によって変動します。具体的にイメージできるよう、「坪数別」「建物種別」でご紹介します。
まず、鉄筋コンクリート造の「坪数別」の解体費用相場は、以下の通りです。
鉄筋コンクリート造(RC造)の解体費用の相場
坪数 | 平均坪単価 | 解体費用の相場 |
---|---|---|
20坪 | 5万4,313円 | 140万円~240万円 |
30坪 | 5万6,076円 | 195万円~300万円 |
40坪 | 7万0,135円 | 240万円~400万円 |
50坪 | 6万9,942円 | 300万円~500万円 |
100坪 | 7万3,855円 | 550万円~800万円 |
鉄筋コンクリート造の「建物種別」の解体費用相場は、以下の通りです。
鉄筋コンクリート造の建物種別 | 解体費用相場 |
---|---|
住宅 | 5万6,828円 |
アパート | 5万8,754円 |
マンション | 5万7,381円 |
ビル | 8万3,798円 |
事務所 | 5万9,114円 |
倉庫 | 5万231円 |
蔵 | 15万5,000円 |
駐車場 | 5万4,600円 |
店舗 | 5万6,164円 |
保育園 | 3万7,962円 |
その他 | 5万9,722円 |
また、地域別の解体費用と相場は、こちらをご参照ください。
鉄筋コンクリート造の解体工事実例
続いて、鉄筋コンクリート造の解体費用を具体的にイメージしていただくため、解体工事の見積り実例をご紹介します。
ここでご紹介する見積りは、すべて解体無料見積ガイドを介して実際に行われた鉄筋コンクリート造の解体工事です。
「住宅」「アパート」「ビル」それぞれの実例をご紹介しますので、鉄筋コンクリート造ならではの費用項目などに着目しながらご覧ください。
東京都足立区鉄筋コンクリート造2階建て住宅の解体事例
東京都足立区にある鉄筋コンクリート造の2階建て住宅の解体工事実例です。
基礎や地中杭の撤去に高額な費用がかかっているため、総額は600万円と住宅の解体としてはかなり高額です。
また、鉄筋コンクリート造は鋼材を用いて建てられている構造であるため「有価物売却費」という項目が発生するのも特徴的です。
こちらの事例では、鋼材の買い取り価格である30万円が解体費用から値引きされています。
建物の構造 | 鉄筋コンクリート造 |
---|---|
建物の種別 | 住宅 |
階数 | 2階建て |
総額 | 600万円 |
項目 | 数量 | 単価 | 金額 |
---|---|---|---|
仮設工事 | |||
単管足場防音パネル、防音シート併用養生 | 324.9m² | 2,500円 | 812,250円 |
重機回送費 | 2回 | 30,000円 | 60,000円 |
内部造作物解体工事 | |||
内部造作物撤去 | 144.49m² | 4,000円 | 577,960円 |
産業廃棄物搬出処分 | |||
木くず搬出処分 | 22m³ | 3,000円 | 66,000円 |
廃石膏ボード搬出処分 | 8m³ | 8,000円 | 64,000円 |
廃プラスチック搬出処分 | 10m³ | 16,000円 | 160,000円 |
混合廃棄物搬出処分 | 15m³ | 20,000円 | 300,000円 |
ケイカル板搬出処分 (石綿含有レベル3とみなし) |
4m³ | 30,000円 | 120,000円 |
RC造躯体解体工事 | |||
躯体解体 (0.45使用) |
144.49m² | 6,000円 | 866,940円 |
躯体コンクリートガラ搬出処分 | 90m³ | 4,000円 | 360,000円 |
基礎解体工事 | |||
RC造土間基礎解体 (地中梁、風鎮含む) |
85.8m² | 10,000円 | 858,000円 |
基礎コンクリートガラ搬出処分 | 80m³ | 4,000円 | 320,000円 |
地中杭撤去処分(L 5mまで) (コンクリート杭、鋼管杭に限る) |
58本 | 15,000円 | 870,000円 |
付帯工事 | |||
植栽撤去処分 | 22m³ | 5,000円 | 110,000円 |
カーポート撤去処分 | 1式 | 50,000円 | 50,000円 |
外構CB塀カット及び撤去処分 (門柱門扉含む) |
1式 | 100,000円 | 100,000円 |
駐車場及び通路コンクリート土間撤去処分 | 1式 | 150,000円 | 150,000円 |
諸経費 | |||
諸官庁届出、近隣対策、諸経費 | 1式 | 100,000円 | 100,000円 |
有価物売却費 | -300,000円 | ||
端数値引き | -190,605円 | ||
小計 | 5,454,545円 | ||
消費税 | 545,455円 | ||
合計金額 | 6,000,000円 |
東京都港区鉄筋コンクリート造3階建てアパートの解体事例
東京都港区にある鉄筋コンクリート造の3階建てアパートの解体工事実例です。
こちらの見積りは基礎の解体費用が安価であるため、同じ場所に新築を建て替えるための解体である可能性があると見て取れます。
杭抜き工事など大掛かりな作業が発生していないぶん、集合住宅の解体にしては総額が低い傾向にあります。
建物の構造 | 鉄筋コンクリート造 |
---|---|
建物の種別 | アパート |
階数 | 3階 |
総額 | 430万円 |
項目 | 数量 | 単価 | 金額 |
---|---|---|---|
仮設工事 | |||
単管足場防音パネル、防音シート併用養生 | 275.5m² | 2,500円 | 688,750円 |
重機回送費 | 2回 | 30,000円 | 60,000円 |
誘導員設置 (必要に応じて) |
15人 | 18,000円 | 270,000円 |
内部造作物解体工事 | |||
内部造作物撤去 | 96.69m² | 3,000円 | 290,070円 |
RC造躯体解体工事 | |||
全3階、2階、1階一部先行解体 (手解体) |
57.02m² | 15,000円 | 855,300円 |
躯体解体 (0.25使用) |
39.67m² | 8,000円 | 317,360円 |
基礎解体工事 | |||
基礎解体 | 32.23m² | 15,000円 | 483,450円 |
産業廃棄物搬出処分 | |||
木くず搬出処分 | 15m³ | 3,000円 | 45,000円 |
廃石膏ボード搬出処分 | 8m³ | 8,000円 | 64,000円 |
廃プラスチック搬出処分 | 8m³ | 16,000円 | 128,000円 |
混合廃棄物搬出処分 | 12m³ | 20,000円 | 240,000円 |
躯体コンクリートガラ搬出処分 | 60m³ | 4,000円 | 240,000円 |
基礎コンクリートガラ搬出処分 | 35m³ | 4,000円 | 140,000円 |
付帯工事 | |||
RC造階段撤去 | 1式 | 200,000円 | 200,000円 |
コンクリート土間撤去処分 | 1式 | 50,000円 | 50,000円 |
石綿含有検査費 (外壁塗装材) |
1式 | 150,000円 | 150,000円 |
付帯工事 | |||
諸官庁届出、近隣対策、諸経費 | 1式 | 150,000円 | 150,000円 |
有価物売却費 | -200,000円 | ||
端数値引き | -142,839円 | ||
小計 | 3,909,091円 | ||
消費税 | 390,909円 | ||
合計 | 4,300,000円 |
東京都墨田区鉄筋コンクリート造7階建てビルの解体事例
東京都墨田区にある7階建ての鉄筋コンクリート造のビルの解体工事実例です。
ほかの建物と大きく異なるのは、安全のための誘導員の設置に180万円もの費用が発生していること。
また、地中杭の撤去にも150万円と高額な費用が発生しています。
大規模な建物ならではの費用によって、総額は3,000万円を超えています。
建物の構造 | 鉄筋コンクリート造 |
---|---|
建物の種別 | ビル |
階数 | 7階 |
総額 | 3,150万円 |
項目 | 数量 | 単価 | 金額 |
---|---|---|---|
直接仮設工事 | |||
単管足場防音パネル、防音シート併用養生 | 1,244.05m² | 2,500円 | 3,110,125円 |
ガラ受設備設置 各3段(2階毎に全周63.75m×3段) |
191.25m | 2,000円 | 382,500円 |
朝顔設置 (北側、南側) |
23.1円 | 10,000円 | 231,000円 |
重機回送費 (0.25サイズ1台、0.45サイズ1台) |
4回 | 25,000円 | 100,000円 |
共通仮設工事 | |||
キャスタージャバラゲート設置 (北側駐車場に設置) |
1式 | 100,000円 | 100,000円 |
電線防護管設置費用 (南側) |
1式 | 250,000円 | 250,000円 |
誘導員設置費(躯体解体時) (2人常駐、増員は安全面の必要に応じて) |
100人 | 18,000円 | 1,800,000円 |
ラフタークレーン使用 (重機揚重時) |
1式 | 150,000円 | 150,000円 |
外壁塗装石綿定性分析検査 (定性分析) |
1検体 | 30,000円 | 30,000円 |
外壁塗装石綿定量分析検査 (定性分析で石綿含有となった場合) |
1式 | 55,000円 | 55,000円 |
内部造作物撤去工事 | |||
内装解体 | 1,176.69m² | 6,000円 | 7,060,140円 |
内装廃材搬出用ダメ穴 | 6箇所 | 45,000円 | 270,000円 |
EV内機械撤去 | 1式 | 150,000円 | 150,000円 |
RC造7階建揚重躯体解体工事 クロスビーム(桁サポート)使用 |
|||
RC造重機解体 (重機併用) |
1,176.69m² | 5,500円 | 6,471,795円 |
地下貯水槽及びRC造作物撤去 (埋め戻し含む) |
1式 | 500,000円 | 500,000円 |
基礎解体工事 | |||
基礎撤去 (コンクリート土間含む) |
173.82m² | 6,000円 | 1,042,920円 |
敷鉄板搬入 (5×10) |
10枚 | 5,000円 | 50,000円 |
地中梁撤去 (図面参照H1,550㎜まで) |
1式 | 1,500,000円 | 1,500,000円 |
産業廃棄物搬出処分工事 | |||
廃石膏ボード搬出処分 | 48m³ | 13,000円 | 624,000円 |
木くず搬出処分 | 80m³ | 4,000円 | 320,000円 |
混合廃棄物搬出処分 | 26.5m³ | 22,000円 | 583,000円 |
廃プラスチック搬出処分 (既存床材、外部配管、地中配管含む) |
50m³ | 17,000円 | 850,000円 |
ガラス・陶磁器搬出処分 | 12m³ | 12,000円 | 144,000円 |
躯体コンクリートガラ搬出処分 | 718m³ | 4,000円 | 2,872,000円 |
基礎コンクリートガラ搬出処分 | 228m³ | 4,000円 | 912,000円 |
エアコンリサイクル処分 | 32set | 10,000円 | 320,000円 |
諸官庁届出、近隣対策、管理費 (道路使用許可申請含む) |
1式 | 650,000円 | 650,000円 |
有価物処分 | -1,500,000円 | ||
調整値引き | -392,116円 | ||
小計 | 28,636,364円 | ||
消費税 | 2,863,636円 | ||
合計 | 31,500,000円 |
鉄筋コンクリート造の解体費用に関わる特徴
最後に、鉄筋コンクリート造の解体費用の特徴を確認していきましょう。
木造・鉄骨造に比べて解体コストがかかる
鉄筋コンクリート造は、木造や鉄骨造に比べ構造自体が頑丈だったり、建物の規模が大きかったりします。
建物が頑丈であるほど壊すのは難しくなり、建物が大きくなればそのぶん解体に必要な人員や日数が増えます。
また、鉄筋コンクリート造に対応した重機を保有していない業者に依頼をした場合、リース料を支払うケースもあります。
このような事情から、鉄筋コンクリート造の建物は、木造や鉄骨造に比べて解体コストが多くかかる傾向にあります。
大規模な建築物の場合、アスベスト除去費用がかかる場合がある
アスベスト含有製品は段階的に規制されており、現在は製造、使用などが完全に禁止されています。しかし、完全に規制される前の2006年以前に建てられた建築物には、建材として使用されている可能性がかなり高いといえます。
鉄筋コンクリート造の建物は、耐火性や断熱性を高めるため、セメント板にアスベストが使われていた時期がありました。大規模な建物であれば、そのぶん除去するアスベストの量も多くなるため、費用は高額になる可能性があります。
アスベストが含まれる建物の解体については、こちらの記事で詳しく解説しています。
木造・鉄骨造と比べ基礎が頑丈な傾向にある
鉄筋コンクリート造の建物は、建物自体の重量や規模に比例して、基礎が頑丈につくられています。
また、鉄筋コンクリート造は木造や鉄骨造に比べ建物の寿命が長いケースが多いため、長期間にわたり耐久性や耐震性を担保するためにも、基礎をより頑丈にしている傾向があります。
頑丈な基礎ほど解体にかかる労力は大きく、その結果、鉄筋コンクリート造の解体費用が高くなる場合があります。
鉄筋コンクリート造建物の代表的な構造
鉄筋コンクリート造建物の代表的な構造には「ラーメン構造」「壁式構造」の2種類があります。
ラーメン構造
ラーメン構造とは、柱と梁でつくった枠組みで建物を支える構造のことです。
柱と梁の結合によって耐震性を高めているため、壁式構造に比べて壁の枚数を減らすことができます。
そのため、ラーメン構造には「空間を広く取ることが出来る」「間取り変更の自由度が高い」といったメリットがあります。
壁式構造
壁式構造とは、壁で建物を支える構造です。柱と梁がなく、面だけで箱状に構成されます。
耐力壁を使用するため「横揺れにも縦揺れにも強い」という特徴があります。
また、柱や梁が張り出さないため「凹凸がなくなり空間がスッキリする」というメリットもあります。
鉄筋コンクリート造の解体方法や工法
鉄筋コンクリート造の解体には「地上解体」「階上解体」「圧砕機工法」「ブレーカー工法」「転倒工法」という特殊な工法が用いられます。
地上解体と階上解体
ビルや高層マンションなど高さのある鉄筋コンクリート造の建物は、「地上解体」「階上解体」のいずれかで解体する場合が多いです。
地上解体は、「ハイリフト重機」と呼ばれるアームの長い重機を地上に設置して、建物を上から解体していく工法です。建物の床面の強度を問わずに施工できるメリットがあります。
階上解体は、重機を大型クレーンで建物の屋上に吊り上げて、上から解体していく工法です。ハイリフト重機が使えない現場や、建物が密集している場所に適しています。
圧砕機工法
圧砕機工法は、鉄筋コンクリートを圧砕しながら解体する工法です。
「コンクリート圧砕機」と呼ばれるハサミ状のアタッチメントを油圧式ショベルカーなどの重機の先端部に取り付けて行います。このアタッチメントには「大割り」や「小割り」の種類があり、小さくなるほど廃材を細かく圧砕することができます。
圧砕機工法は「振動や騒音が少ない」「分別に適している」というメリットがあります。
ブレーカー工法
ブレーカー工法は、「ノミ」と呼ばれる杭を使用し、鉄筋コンクリートに打撃を与えて細かく砕いていく工法です。
施工範囲によって、「大型ブレーカー」または「ハンドブレーカー」のいずれかを選択します。大型ブレーカーは油圧式で規模が大きいものを指し、ハンドブレーカーは狭い場所でも作業ができる長さ70cm、重さ20kgほどのものを指します。
ブレーカー工法のデメリットは連続的な騒音や粉塵が出ることです。そのため、近隣への迷惑を考慮し、市街地ではあまり用いられることがありません。
転倒工法
転倒工法は、建物の壁や柱を敷地の内側に引き倒してから、地上で細かく分別解体する工法です。
転倒工法には、ワイヤーを掛けて引き倒す方法と、重機と溶断で引き倒す方法があります。周囲に足場を組んで上から順番に解体していく方法に比べ、粉塵の飛散量が少ないのが特徴です。
主なメリットは、高さのある壁、柱、煙突などを解体する際に、高所作業をせずに済むことです。高い外壁や煙突がついた建物を解体する際に用いられます。
鉄筋コンクリート造の解体費用についてのまとめ
鉄筋コンクリート造の取り壊しには、多額の費用と長い工事期間がかかります。さらに、建物の状況によっては期間と費用が上乗せされる場合もあります。
しかし、工事の内訳や費用の抑え方を知っておく事で、より適切な契約を結べます。適切な契約を結ぶ為のポイントは「中間マージン」を発生させずに「相見積り」を取ってもらう事です。
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