解体工事の話題では、しばしば「ミンチ解体」という言葉を耳にします。これは、かつて行われていた解体手法で、現在は「分別解体」という工事手法が主流です。
では、一体この2つの手法は何が違うのでしょうか?また、なぜ現在は分別解体が主流になったのでしょうか?このあたりを詳しく解説していきます。
ミンチ解体と分別解体の違い
ミンチ解体と分別解体は工事の手順と廃材の取り扱いが異なります。それぞれの手法を確認したうえで、なぜミンチ解体が禁止になったのかをご理解ください。
ミンチ解体とは
ミンチ解体は、建物の構造や使われている建材に関係なく、重機を使って一気に建物を壊していく方法です。
工期が短く人件費などを抑えることができるため、かつては主流の工事手法でした。 しかし、2002年5月に完全施行された建設リサイクル法で、廃材の取り扱いが厳しくなり現在は禁止されています。
分別解体とは
分別解体は、建材を品目ごとに分別しながら計画的に解体していく手法です。
廃材の分別は手作業で行われるため、工期は長く人件費もかかります。しかし、分別解体では、その分より多くの建材をリサイクルできるのが特徴です。
分別解体は、建設リサイクル法が施行されて以降、法令に遵守した正しい施工方法として現在の主流となっています。
ミンチ解体と分別解体の工事方法の比較
ミンチ解体と分別解体では、工事の方法が大きく異なります。それぞれの工法を比較して、現行の正しい手順を把握しましょう。
ミンチ解体の工事方法
「バケット」や「つかみ機」と呼ばれる、解体専用のアタッチメントを付けた重機を使って一気に壊していきます。
なお、前述した通りミンチ解体は廃材の分別をしません。そのため、ガレキは重機などで細かくしてから運搬します。
一般的な戸建て住宅なら工期は2~3日ほどです。
分別解体の工事方法
分別解体もアタッチメントを付けた重機を使うのは同じですが、その前に手作業で構造以外の建材を撤去します。
まずは瓦と内装、そして畳、内壁、断熱材と、家を建てる時と逆の手順で撤去していくのが一般的です。
躯体以外の部分が撤去できたら重機を使って上モノを壊し、斫り工事により基礎部分を掘り起こしていきます。
この際、分別する品目ごとに廃材をまとめながら効率的に進めて行くのがポイントです。
特にコンクリート、アスファルト、木材の3品目は建設リサイクル法により「特定建設資材」に指定されているので、工事をしている現場で都度分別をしなければなりません。
さらに、建設リサイクル法が施行されて以降、廃材の中間処施設や各自治体が定める回収基準はより厳しくなっています。そのため、プラスチックやガラス、鉄など分別する品目は多岐に渡っていのが現状です。
もちろん廃材の分別は基本的に手作業なので、ミンチ解体よりも人員が必要になります。
工期は一般的な戸建て住宅であれば、およそ2週間前後が目安です。
ミンチ解体の違法性について
既にお分かりいただいた通り、現在ミンチ解体は禁止されています。
最後に、ミンチ解体が規制された背景とミンチ解体を行ってしまったときの罰則などについても確認しておきましょう。
2002年より全面的に禁止されている
2002年に建設リサイクル法が施行されて以降、延床面積の合計が80m²(約24坪)を超える建物を解体する際は、建設リサイクル法の届出が必要になりました。
これにより、廃材の分別をしないミンチ解体は禁止され、規定に沿った方法で廃材を回収しなければならなくなったわけです。
建設リサイクル法が施行される前は、廃材を受け入れる中間処理施設がひっ迫しており、不法投棄が後を絶ちませんでした。
しかしながら、建設リサイクル法が実施されて以降2001年度には1,150件あった不法投棄の発生件数は、2021年度には107件と10分の1以下にまで減少しています。
ミンチ解体を行った場合の罰則
建設リサイクル法に関する罰則の規定は同法の第7章に明確な記載があります。
なお、建設リサイクル法に違反した場合は、条文によって10万円以上50万円以下罰則の対象になります。
違反の内容 | 罰則 | 罰則条項 |
---|---|---|
対象建設工事の届出 | 20万 | 51条1号 |
対象建設工事の変更の届出 | 20万 | 51条1号 |
対象建設工事の届出等に係る変更命令 | 30万 | 50条1号 |
分別解体等義務の実施命令 | 50万 | 49条 |
参考 建設リサイクル法:建設リサイクル法に違反した場合の罰則東京都都市整備局
参考 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律e-Gov法令検索
ミンチ解体による不法投棄
ミンチ解体による最も深刻な弊害が、敷地内に埋められた廃材の不法投棄です。
当時は同じ敷地内に穴を掘って、その場にガレキなどを埋めている現場が多かったため、最近になって解体や新築の工事をした時に、地中から大量のゴミが発見される場合があります。
また、見つかった埋設物は、こちらも建設リサイクル法により撤去することが定められているため、撤去費用は解体工事を依頼した施主が負担をしなければなりません。
さらに、埋設物は建物の基礎を掘り起こしてみないと有無が確認できないので、工事の後半で追加工事の対象になってトラブルになるケースが少なくありません。
ミンチ解体を行った場合による依頼主への影響
建設リサイクル法に関する届出は、委任状を書いて解体を依頼する業者に代行してもらうケースが多いです。
しかし、届出の義務そのものは施主にあります。
そのため、届出を怠った場合はもちろん、不法投棄などの違反があった時に施主に責任が問われる場合があるのでご注意ください。
解体業者に依頼する際は、廃材の処分結果を記録する「マニュフェスト」などの資料を漏れなく発行してもらえるかどうか、事前に確認をしておくのが良いでしょう。
ミンチ解体と分別解体の違いについてのまとめ
ミンチ解体は分別解体に比べて工期も短く人件費も安く済みますが、最後の廃棄物処理ではるかに費用がかかってしまいます。
また、現在は法的に禁止されているのにも関わらず、期間や手間を省けるため隠れてミンチ解体を行い平気で不法投棄する業者も存在します。
不法投棄が発覚した場合、業者はもちろん施主にも責任があるとされてしまう場合もあります。他の業者よりもあまりに安かったり工期が短い解体工事を提案されたら内容を確認してみましょう。
法律違反で環境に悪い上費用も高い工事よりも、正しく法律を守って環境にもお財布にも優しい工事を行いたいですよね。