プレハブに使用されていることが多い軽量鉄骨ですが、軽量鉄骨造の建物取り壊しに関する情報量は、木造の建物に比べてあまり多くありません。
しかし、工事を検討するにあたって、おおよその費用はぜひ把握しておきたいところです。
そこで、今回は軽量鉄骨造の取り壊し費用について、費用が高くなる理由や費用を抑える方法を併せて解説します。
軽量鉄骨造の取り壊し費用の相場
軽量鉄骨造の建物の取り壊し費用相場を、「地域別」「建物種別」「坪数別」でご紹介します。
地域別の軽量鉄骨造の取り壊し費用相場
地域 | 平均坪単価 |
---|---|
全国 | 38,462円 |
東京都 | 38,381円 |
神奈川県 | 39,179円 |
埼玉県 | 39,030円 |
千葉県 | 35,159円 |
愛知県 | 31,092円 |
大阪府 | 41,856円 |
福岡県 | 36,302円 |
当協会が過去に行った、軽量鉄骨造の建物の取り壊し工事データから、地域別の費用相場を主要都市に絞り表にしました。
大阪府が全国相場よりもやや高めではあるものの、軽量鉄骨造の建物を取り壊す場合、地域による坪単価に大きな差はありません。
建物種別の軽量鉄骨造の取り壊し費用相場
建物 | 平均坪単価 |
---|---|
自宅 | 38,405円 |
小屋・倉庫・蔵 | 38,401円 |
アパート | 38,718円 |
マンション | 39,288円 |
ビル | 41,523円 |
次に、軽量鉄骨造の取り壊し費用を建物種類別に比較しました。
自宅、小屋・倉庫・蔵、アパート、マンションで大きな差は見られませんでした。
しかし、軽量鉄骨造のビルのみ、取り壊し費用の坪単価が上がります。
坪数別の軽量鉄骨造の取り壊し費用相場
坪数 | 平均坪単価 |
---|---|
20坪 | 38,536円 |
30坪 | 38,446円 |
40坪 | 38,466円 |
50坪 | 38,431円 |
60坪 | 38,545円 |
70坪 | 38,811円 |
そしてもう1つ、軽量鉄骨造の取り壊し費用を坪数別で比較しました。
表を見てわかる通り、坪数によって単価はほぼ同じという結果になっています。
80坪以上の建物は、サンプル数が少なく平均データに偏りが出るためピックアップしていません。
軽量鉄骨造の建物を取り壊した実例
軽量鉄骨造の建物を取り壊す際の費用相場をご紹介しましたので、次に実際に建物を取り壊した実例もご紹介します。
栃木県足利市で軽量鉄骨造の建物を取り壊した事例の見積り
こちらの見積書は、栃木県足利市において軽量鉄骨造の倉庫を取り壊した事例です。
見積書を見ると、「軽量鉄骨造波ストレート葺平屋建て倉庫」と記載があり、28坪と記載されていることが分かります。
「軽量鉄骨造トタン葺下屋」という記載もあり、そちらは22坪のようです。
軽量鉄骨造の解体費用に関する特徴
軽量鉄骨造の建物の取り壊し費用に関して、一般的な木造の建物と比べてどのような特徴があるのかをご紹介します。
木造に比べ、軽量鉄骨造の方がやや高額になる傾向がある
一つ目の特徴としては、木造に比べ、軽量鉄骨造の建物の方がやや取り壊し費用が高額になる傾向があります。
その理由は下記の6つが挙げられます。
【理由1】鉄骨切断時の火事を防ぐために作業工程が多くなる
木造<軽量鉄骨造<重量鉄骨造<鉄筋コンクリート造
頑丈な建物ほど取り壊しづらいため工期が長引く傾向があります。特に鉄は簡単に折れないので、バラすためには溶断機を使用して切断する必要があります。
鉄骨を切断するための機械です。一般的には、アセチレンガスと酸素を使用するガス溶断機を指します。鉄骨の一部分を加熱しながら酸素を吹きかけて切断するため、作業には危険が伴います。そのため、取り扱うにはガス溶接作業主任者という資格が必要です。
ガス溶断機は切断時に火花が飛び散るため、火事が起こらないように細心の注意を払わなければなりません。
ですから、切断作業と切断以外の作業とで工程を分けて行う必要があり、人件費等がかかってしまいます。
【理由2】廃材の分別に手間がかかるうえ処分費が高い
軽量鉄骨造の建物といっても、内部には鉄以外に木材なども使用されています。なので、重機で壊しつつ手作業で廃材を分別しなければなりません。
加えて、処分単価に関しては、一般的に木材と比べると鉄は高額です。そのため、分別作業の手間と高額な処分費でコストがかさみやすいのです。
【理由3】重機に軽量鉄骨専用のアタッチメントが必要
軽量鉄骨造の建物は木造より頑丈なため、木造と同じようには壊せません。そのため、重機に軽量鉄骨専用のアタッチメントを取り付ける必要があります。
重機のアームの先端に取り付けるパーツのことです。先端を取り替えれば、1台の重機で様々な工事に対応できます。
アタッチメントを自社で用意するとコストがかかるため、必要に応じてレンタルしている業者さんも数多く存在します。もし、アタッチメントをレンタルする場合は、おおよそ以下のレンタル料が発生します。
なお、鉄骨カッターは鉄骨を挟んで切断する目的、木造ハサミは建物に使用されている資材をつかんで壊していく目的で使用されます。
アタッチメントの名称 | 1日当たりのレンタル料(円) |
---|---|
ペンチャー(鉄骨カッター) | 15,000~20,000 |
木造ハサミ(油圧式) | 4,000~7,000 |
上表の場合、鉄骨カッターをたった3日間レンタルするだけで45,000~60,000円、7日間レンタルしたら105,000~140,000円にもなってしまいます。
また、1日当たりのレンタル料金については、鉄骨カッターは木造ハサミのおよそ3倍程度かかります。
つまり、重機のアタッチメントにかかる金額の差で取り壊し費用が高くなります。
【理由4】ベタ基礎である可能性が高い
建物の床下全体に、鉄筋コンクリートを流し込んで造る基礎をベタ基礎と言います。
床部分に鉄筋を使わない布基礎と比べると、ベタ基礎は使用する鉄筋コンクリートの量は多くなるので、取り壊し費用は高くなりがちです。
【理由5】アスベストが使われている可能性が高い
アスベスト含有製品は段階的に規制されており、現在は製造、使用などが完全に禁止されています。しかし、完全に規制される前の2006年以前に建てられた建築物には、建材として使用されている可能性がかなり高いといえます。
軽量鉄骨造は耐火性が低いため、アスベスト含有耐火被覆材が建物に使用されていた時期があります。義務づけられている事前のアスベスト調査費用と取り壊し時の対応によって、コストが高くなることが考えられます。
アスベストが含まれる建物の解体については、こちらの記事で詳しく解説しています。
【理由6】ALCが使われている可能性が高い
軽量鉄骨造の建物の外壁には、ALC板が使われている可能性が考えられます。
主に外壁材として利用されるALC(軽量気泡コンクリート)ですが、へーベルハウスの建物がALCの外壁として有名です。
このALCは取り壊し工事で一般ごみとして出すことができず、産業廃棄物として処理する必要があります。
解体業者でも産業廃棄物処理業の認可を受けたところはありますが、産廃業者にALCの処理を依頼することでコストが上がります。
軽量鉄骨造の解体にかかる人件費は、木造と比べても大きな差が出ない
重量鉄骨造と違い、軽量鉄骨造と木造の建物は工事で出た廃材を手運び出来るため、人件費では大きな差が出ることはありません。
鋼材の厚みが6ミリ以上のものが重量鉄骨、6ミリ未満のものが軽量鉄骨とされ、マンションやビルには重量鉄骨、2階建てまでのアパートや一般住宅などには軽量鉄骨が利用される傾向にあります。
軽量鉄骨造の取り壊し費用の抑え方
軽量鉄骨造の建物を取り壊そうと思っている方は、少しでも費用を抑えたいところですよね。
軽量鉄骨造の建物ならではの、費用を抑えるためのポイントが2つありますので、下記でご紹介します。
廃材の鉄を買い取ってくれる業者に依頼する
軽量鉄骨造の工事では、業者さんが鉄を有価物として買い取っているかがポイントです。
相見積りで複数の業者さんから取得した見積書を見ると、「有価物買取」や「有価償却」といった項目で値引きされている場合があります。
買い取ってもらえる不用品のことです。リサイクルができる物品や素材なら、有価物として有償で引き取ってもらえる可能性があります。
つまり、有価物買取などの項目がある業者さんは、鉄の買い取り額を依頼者に還元しているのです。ですから、見積書をチェックする際は、必ず上記項目が載っているか確認しましょう。
ただし、項目として載せていないものの、値引き自体は行っている業者さんも存在します。項目が見当たらない場合は業者さんに直接聞いてみましょう。
不純物が多く含まれる鉄は、鉄くず扱いとなり買い取ってもらえません。具体的には、磁石にくっつくかどうかで判断され、くっつく場合は鉄くずとして対象外とされるケースが多いです。
軽量鉄骨造の取り壊しが得意な業者に依頼する
日本では木造の建物の数が多いため、木造の工事をメインとしている業者さんがほとんどです。木造しか請け負っていない業者さんに至っては、そもそも軽量鉄骨の工事に対応すらできません。
なので、軽量鉄骨造の工事を得意とする業者さんを探す必要があります。また、一口に得意といっても、技術や所持重機の差も費用に大きく影響します。
軽量鉄骨造の工事を得意とする業者に相見積りをし、費用を抑えましょう。