古い家屋に残されている井戸や、解体工事中に地中から見つかった古井戸は、簡単に埋めることはできません。なぜなら、井戸を埋め戻すためには、水質や地質に気を配りつつ埋めていく適切な工事に加え、お祓いや息抜きといった独自の儀式を行う慣習が根強く残っているからです。これらを遂行していくため、井戸の解体・撤去には様々な費用がかかることを知っておく必要があります。
今回は、井戸を解体するための手順と必要な費用について、詳しく解説していきます。
井戸の埋め戻しとは?
井戸の埋め戻しとは、井戸の解体作業のうち、井戸を埋めて更地にする作業を指します。ただし、単に手近にある砂などを投入して井戸を埋めるわけではなく、適切な材料で埋め戻すことが求められます。
井戸は自分で埋め立てられる?
井戸の解体費用をできるだけ節約するために、自分自身で井戸を埋めることは不可能ではありません。ただし、単に砂を投入して井戸を埋めるだけでは、様々な問題が発生すると見込まれます。
- 地下水の水質が悪化する
- 地盤が弱くなって新築に影響する可能性がある
- 土地の売却後、買主との間でトラブルになる
特に、井戸水を使用しているご家庭が近くにお住いなら、水質には細心の注意を払わなければなりません。良質な石や砂を正しい方法で投入しなければ、地下水の水質が悪くなる恐れがあります。
また、お祓いをせずに埋め戻しを行った井戸があると、売買契約が成立しにくくなるケースが考えられます。
売買契約において、お祓いの有無は説明が必須となる項目ではありませんが、一部の方から購入を避けられてしまう可能性があるのは確かです。
その他、正しい方法で井戸の埋め戻しが行われていなければ、周辺の地盤が弱くなってしまう場合があります。
井戸の有無を告知せずに土地を売却すると、最悪の場合、瑕疵担保責任などを問われ契約破棄の恐れもあるのでご注意ください。
売却した不動産に問題があった場合、売主が負わなければならない責任を指します。問題の程度に応じて、買主は損害賠償の請求や契約の解除ができます。
井戸の埋め戻しは、慣習的にも注意すべき点が多く、費用が節約できるとはいえ自分でやるリスクも大きいといえます。可能であれば、専門知識のある解体業者に依頼して確実に施工してもらいましょう。
井戸を解体・撤去する手順
それでは、井戸の解体・撤去を行う実際の流れについて確認していきましょう。基本的には、以下のような手順でお祓いや息抜きを執り行い、井戸を埋めていきます。
- お祓いをする
- 井戸に残っている水を汲み上げたり、ゴミを掃除したりする
- 息抜きを行う
- 井戸に砕石や砂を投入して埋め戻しをする
- 井戸の枠を撤去して整地する
1.お祓いをする
井戸を解体する前は、家の敷地内でお祓いを行うのが通例です。
お祓いの形式やお供え物の用意などは、依頼する神社によって異なります。同席する際の服装は普段着で構いませんが、ラフすぎる服装は避けるのが無難です。
お祓いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
2. 井戸に残っている水を汲み上げたり、ゴミを掃除したりする
ここからは解体業者の出番です。
井戸水が残っている場合は、底に溜まっている水を抜く作業が発生します。また、長年使われていない井戸にはゴミが溜まっていることも多いため、ゴミの撤去や井戸内部の清掃も行います。
3. 息抜きを行う
井戸を清掃後、息抜きを行います。塩化ビニール製のパイプまたは竹を井戸の底から地面の上まで通していく作業です。
井戸の息抜きについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
4. 井戸に砕石や砂を投入して埋め戻しをする
息抜きができたら、コンクリートから作られた再生砕石や再生砂を使って井戸を埋め戻します。
良質な砕石や砂を正しく投入しなければ、地下水の水質が悪化や地盤の弱体化の原因になるため、知識のある解体業者に任せるのが安心です。
5.井戸の枠を撤去して整地する
井戸に投入する砕石や砂が地面まで達したら、井戸の枠を撤去します。
最後に、井戸があった場所と周囲の土地を平らにならし、整地をして完了です。
整地後は、何もなくなった地面から息抜きのパイプだけが出ている状態になります。
井戸を解体するための費用相場は?
井戸の解体にかかる費用は、パターンによって大きく異なります。大まかには、井戸の埋め戻しのみ行う場合と家屋撤去工事に伴って井戸も撤去する場合の2パターンです。お祓いを依頼する場合は、費用が2~3万円プラスされます。
井戸の埋め戻しのみ行う場合
井戸の埋め戻しにかかる費用は、目安で10万円です。
解体業者や工事現場によって異なりますが、井戸の埋め戻しにはコンクリートから作られた再生砕石や再生砂などを使用します。1m³あたりの価格は、砕石が約1,500~2,000円、再生砂が約2,000~2,500円です。
そのため、井戸が円筒形で、直径が1m(半径0.5m)、深さが8mの場合、埋め戻しに必要な石・砂の費用は以下の通りです。(1m³あたり2,000円と仮定)
0.5m(半径)×0.5m(半径)×3.14(円周率)×8m(深さ)=6.28m³(井戸の空洞)
6.28m³×2,000円/1m³=12,560円
よって、石・砂の費用は12,000~13,000円と算出されます。ただし、質の良い川砂(1m³あたり約8,000円)を使用した場合は、砕石と併せて20,000~30,000円になるので注意です。
また、上記の場合を想定して、その他の項目を例示します。
- 石・砂運搬2トントラック1台あたり10,000円×2台=20,000円
- 作業員1人あたり20,000円×2人=40,000円
- 塩化ビニールパイプ1mあたり600円超×8m=約5,000円
- 水抜き(専用機械)=10,000円
- 井戸枠の処分費用=10,000円
石・砂の購入費用と上表の費用をすべて合計すると、約10万円です。
しかし、条件によって費用は5万~20万円とかなり差が出ます。これは井戸の大きさや深さ、底の広がり方により、必要な石や砂の量、トラックの台数などが左右されるからです。まずは解体業者に見積金額を出してもらいましょう。
参考 追加料金がかかる場合-井戸・池・庭石・敷石・間地ブロック撤去処分など解体工事【神奈川県、東京都】は株式会社ハマーズへ
参考 井戸の埋め方と業者に依頼する場合の費用の相場について井戸掘り士
家屋撤去工事に伴って井戸を埋める場合
当協会を利用して行われた家屋の撤去工事のうち、井戸の埋め戻しを伴った580件のデータでは、井戸部分の埋め戻し費用の平均は4万3,100円でした。
なお、家屋の撤去と同時に井戸を埋め戻す場合、解体現場の重機を使って簡単に井戸が撤去することや、解体工事で発生した基礎コンクリートの砕石を井戸の埋め戻しに転用することが可能です。そのため、井戸の埋め戻しのみを行う場合と比べて費用が安く済む可能性があります。
実際に見積書を確認したところ、以下のように1万5,000円と費用がかなり抑えられたケースもあります。
家屋撤去工事と同時に井戸を埋め戻して費用が抑えられたケース
ただし、砂を購入して投入した結果、15万円かかったケースもあります。
砂を購入、運搬したため費用があまり安くならなかったケース
上記のように、現場や解体業者によって費用には差が生じます。しかし、撤去に伴って井戸の埋め戻しを行う場合、一般的には費用を安く抑えられます。
井戸が地中埋設物として地下に埋まっていた場合は、家屋の撤去前に存在の有無がわかりません。その場合、撤去費用が見積金額に含まれないケースがほとんどです。あとで井戸が見つかった場合は追加費用の対象となるため、担当する解体業者に事前に相談しておくのが良いでしょう。
井戸の埋め戻しで業者選びが重要なワケ
井戸を解体・撤去する際は、解体業者の選び方も重要です。埋め戻し作業が適切に行われず、ゴミを投入されて不法投棄の処罰対象になったり、再度の埋め戻し作業で余計な費用がかかったりする可能性があるからです。
井戸の解体を依頼する場合は、下記のような専門業者に依頼しましょう。
井戸生活(株式会社ニューバッズ)
画像引用:井戸生活
東京都千代田区の認定解体業者です。井戸を専門にしており、古井戸の撤去・再生や新しい井戸の掘削を行っています。井戸を埋めるために必要な準備などの相談も可能です。
富士ストリーム株式会社
画像引用:富士ストリーム株式会社
東京都練馬区の認定解体業者です。井戸の埋め戻し後、再び井戸水が必要になった場合にも対応できるような井戸の埋め方を提案しています。井戸水は災害への備えにもなるので、今後まったく井戸水を使用しないとは言い切れない場合にオススメの解体業者です。